「そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか」山口揚平

今日は「そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか」という、かなりタイトルが長い本のご紹介です。

もしかすると、タイトルだけを読むと、要するに「独立した後のお金の稼ぎ方をてっとり早く教えますよ」という本に感じるかもしれないのですが、そうではありません。

もっと世の中の仕組みを改めて知るような、根っこの部分の知識を得るための本です。

この本に出会ったのは、もう独立した後だったと思うのですが、どなたかがFacebookでこの本を書かれている山口揚平さんの記事をシェアされていて、その一節が非常に心に残ったからでした。

シェアされた記事というのは、「信用というものを方程式で表すと、『信用=(確実性+専門性+親密度)/利己心』」というものでした。この方程式は、確実性や専門性や親密度を上げると、あなたの信用度は高まるというもので、それだけでも頭にすっと入ってくる分かりやすさのある表現なのですが、最後に「利己心」で割るというのが、個人的に非常に納得のいく考えでした。

どんなに確実性や専門性や親密度を磨いても、利己心が強すぎると、その信用を帳消しにしてしまうよ、ということです。
他者に対して信用するときも、切れ者で仲が良かったとしても、自分のことだけを考えている人間は、どこか信用できません。
また、他者から信用してもらいたいときにも、その前項の全てを磨いていきつつ、最後は利己心をどれだけ下げていけるかが問われているのだと、素直に納得できるものです。

数式で表すというのは、数学の苦手な自分には、あまり馴染みはないのですが、この方程式に関しては記憶の中にしっかりと刻まれました。
そして、きっとこの長いタイトルの本にも、シンプルにまとまった方程式のようなものが載っているような気がして、購入に至ったのでした。

この本の軸になる部分として、「ビジネスというものは、『バリュー』と『システム』と『クレジット』で成り立っていると、著者は説きます。

「バリュー」とは、実際に販売するものの価値です。価値とは、それを提供した時にどれだけ喜んでもらえるかという意味に近いでしょう。
商品価値が高いことはビジネスにとってとても重要であることは間違いないのですが、実はそれはビジネスを成り立たせる要素の一部分でしかありません。

その他に、「システム」と「クレジット」があって成り立ちます。

「システム」とは、稼ぐための仕組みのことです。バリューが「何を売るか」だとすれば、「どのように売るか」がシステムにあたります。
八百屋さんでいえば、バリューは野菜であり、システムにあたるのは「直接売買する場所である『お店』を用意すること」にあたります。

お店を用意して、直接売買できる場所を作るというのは、最もシンプルな仕組みですが、それ以外にも色んなパターンがあるというのが、この本の面白さの軸となっています。

例えば、自分の大好きで良く訪れる「ほぼ日」というサイトは、「良質なコンテンツ(インタビューやマンガ等の読み物)」を「無料」で提供しているのですが、なぜビジネスとして成り立っているかといえば、コンテンツを読みにくる人がこのサイトのファンになり、「ほぼ日手帳」やその他の商品を購入してくれるからだといいます。

八百屋さんでいえば、野菜はただで提供し、ファンになってくれたお客さんが、八百屋さんの帽子やエプロンを買っていくというのに近いでしょうか。
「共感を作る」というのが、このパターンの仕組みです。

このような仕組みを5つの領域に分けて、10パターン紹介してくれます。
ディズニーやHISの仕組みには、目からウロコが落ちる心持ちでした。

そして最後の「クレジット」とは、日本語に訳すと「信用」であり、八百屋さんでいえば、販売者であるおじさんおばさんが、信用されていることが大事だということです。
そういう意味では、八百屋さんは、確実に良いものを、高い専門性を持って、親しみやすく、皆のことを考えてくれるお店が、やっぱり信用されていますよね。

ちょっと長くなりましたが、この本は「稼ぐということが、何から生まれているのか?」ということを、分かりやすく解きほぐしてくれます。
そして、解きほぐされた答えに、まだまだ世の中捨てたもんじゃないなと、希望を見いだせる本です。

山口揚平さんの著書

山口揚平さんの記事(Cakes)