<2015年ラグビーW杯 南アフリカ戦>おっさんになった元高校ラガーたちが感じたこと

「高校時代、ラグビーをしていました」というと、ちょっとオッと思われる方もいるかもしれないのですが、決して強いとは言えない、公立高校での話。

僕らの高校は県大会の3回戦、私立高校に30点差をつけられて、引退。
チームとしても、もちろん選手としてもパッとしませんでした。

それでも、高校時代を通して、ラグビーが好きでした。
彼女もいないし、勉強も特別できない、クラスでも目立たない。
下手でも弱くても、それでもラグビーをしていることだけには胸を張れていたように思います。

僕らが高校を卒業した年はワールドカップイヤーで、日本代表はニュージーランドを相手に145対17の大敗を喫しました。
もしかすると記憶にある方も多いかもしれません。
世間でも注目を浴び、歴史的惨敗と言われ、ニュースでもたびたび取り上げられました。
「ラグビーって弱いんだ」と思われることが、悔しかったことを覚えています。

卒業後、大学でラグビーを続けなかった僕は、何となく後ろめたい気持ちもあり、あまりラグビーを観なくなりました。
そして、そのまま、2015年のワールドカップを迎えることになります。

初戦である南アフリカ戦。
普段はラグビーをほとんど見ていない僕ですが、やはり、日本代表の試合は気になり、1人テレビの前にいました。
「よくある善戦。結局どこかで負ける。」
そう思いつつ、世界ランク2位の南アフリカと拮抗した闘いを続ける日本代表を見ながら、なぜか試合が終わる前から視界はぼやけていました。

後半20分ごろだったと思うのですが、高校のラグビー部同期5人のグループLINEに連絡がきました。

「見てる?」

意外なことに全員が観ていました。
僕を含めて、ほとんどのメンバーは高校でラグビーを辞めていて、普段ラグビーの話もほとんどすることはありません。

「みんな、結構ラグビー好きなんだな…」と思うと、ちょっと嬉しくなりました。
そこからLINEを通じて、5人での観戦がスタート。

「いけー」
「行けるぞ、勝てる!」
「五郎丸!」

グループLINEに、次々とメッセージが入ってきます。

いつぶりだろうか、彼らと一緒にラグビーを見るのは。
僕は久しぶりに一緒にラグビーをしているような、不思議な気分になりました。

まだ負けている試合の中、LINEには「泣けてきた」とのメッセージが。
「もう観れない」「泣ける」など。

すっかり中年となった、いつかの高校ラガーたちは、南アフリカにタックルし続ける日本代表と、がむしゃらに楕円球を追っていた、かつての自分たちを重ねていたのかもしれません。
ただ、日本代表が取り戻そうとしているのは、日本ラグビーのプライドであり、かつてラグビー部だった僕たちにとって大切な「何か」だったのだと思います。

そして、最後のパスが、マフィからヘスケスへ。
滲んだ視界の中でも、ボールがしっかりとグランディングされているのは分かりました。逆転。

ノーサイドのホイッスルが響く中、あとからあとから涙が溢れました。
高校の同期たち全員も泣いていました。
画面の中の日の丸をふるおじさんも泣いていました。

ラグビーを続けている人も、どこかで挫折した人も、
ラグビーをしたかったけどできなかった人も、
どこかでラグビーに携わった人はみんな、
きっと同じ気持ちだったんだと思います。

「僕らが憧れたラグビーはやっぱりすごかった。
日本代表は、それを証明してくれた。」

………

ニュージーランド戦の大敗と、高校3年時の花園予選3回戦での敗戦は、どこか陸続きだったように思います。
僕があきらめたこと、見ないようにしていたことを、ラグビー日本代表は20年かけて「出来る」と証明してくれました。

下手くそなりに必死でラグビーボールを追ってたあの頃の自分。
同じ気持ちになるのは無理でも、少しでも向き合って、一歩ずつ足を搔いてみようと思います。

エディー・ジョーンズ監督とラグビー日本代表、全てのラグビー関係者、
そしてラグビーに心からの敬意と感謝を込めて。